5月31日の参議院本会議において、地方分権一括法が可決・成立したことをうけて、談話を発表しました。
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【談話】「放課後児童クラブの職員配置基準の参酌化」に抗議する
2019年6月4日
全国福祉保育労働組合 書記長 澤村 直
はじめに
5月31日、参議院本会議において第9次地方分権一括法が自民・公明・国民民主などの賛成多数で可決・成立した。同一括法に含まれる児童福祉法の一部「改正」では、放課後児童クラブ(以下、学童保育という)に関して国が定める職員配置基準を実質的に撤廃する「参酌化」が強行された。13本もの法律をまとめた同一括法は、衆・参の内閣委員会でわずか数時間の審議時間しかなく、時間をかけて審議が尽くされたとは到底言えない。
福祉保育労は、今回の「参酌化」に対して怒りを持って抗議する。
1.職員配置基準の重要性
① 学童保育を利用する子どもの数が共働き世帯の増加とともに増え続け、各地の学童保育施設での保育環境の維持・向上は、子どもの命と安全を守るための大きな課題となった。そのなかでも、人的環境としての職員配置は子どもの処遇の要となることはもとより、学童保育指導員の労働条件の改善など長く働き続けられるための労働環境としても非常に重要である。
② 学童保育は、保護者の自主運営に始まり、多くの関係者の運動によって自治体の単独補助事業として全国に広まった。それまでは各自治体や学童保育の設置・運営主体に任されていた設備や職員配置を、学童保育指導員の専門性も認めた形で国が基準化したのはわずか4年前である。特に職員配置を全国一律の最低基準である「従うべき基準」として、全国どこの地域に暮らしていても子どもの受ける保育内容を最低限保障したという意義は非常に大きい。
2.「参酌化」による問題点
① 内閣委員会での審議では、政府は「これまでの配置基準では運営に支障をきたす自治体が多い」と答弁して、学童保育指導員の確保が困難であることを理由にあげている。しかし、配置基準を引き下げれば、職員の業務は過重になり、その確保がいっそう困難にあることは明らかである。専門性のある学童指導員の確保策を議論することなく、安易に基準を引き下げることは、子どもの命と安全を守るという国と自治体の責任を放棄するに等しい。
② そもそも、「従うべき基準」を「参酌化」すれば、自治体の財政事情などに応じて独自に基準を引き下げることが可能となり、結果として全国一律の最低基準という意義が失われてしまう。これでは、自治体間の格差が広がることになり、子どもの保育をうける権利を保障するという観点からも大きな問題である。
③ 全国で11道県9市町村から「基準維持」「保育の質の確保」を求める意見書が採択され、全国学童保育連絡協議会がとりくんだ「基準維持」を求める署名が29万筆近く集約されていることからも、こうした問題点のある「参酌化」を国民が望んでいないことは明らかである。
3.「参酌化」ではなく、さらなる基準引き上げを
以上のことから、学童保育の職員配置基準の実質撤廃につながる「参酌化」は、到底認めることはできない。
私たち福祉保育労は、学童保育の職員配置基準を引き下げることをけっして許さず、国・自治体の責任において子どもの命と安全が守られた学童保育を実施することを強く要求する。また、基準を引き下げず、より充実した保育内容が保障できる基準への引き上げを各自治体に求める運動に、関係団体と共同して奮闘する決意である。
以 上